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『日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯』★★★★☆
日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯
日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯
松瀬 学
新潮社

混迷を極めるイラクにて、車での移動中に銃撃を受け亡くなった外交官、奥克彦さんの評伝。

あとがきで著者は、美談にするためだけの記事にしたくなかった、しか集まったのは褒め讃える話ばかり、悪い話は出て来なかった、と書いています。

確かに美談ばかり。

これでは、ほんとうにただの故人をヨイショするだけの本になってしまうと危惧するのもわかるほど、そういったエピソードが続いています。

かなりひねくれものの私ですが、一読して、やはり奥さんの外交官としての手腕、情熱、正義感、人間としての温かさ、大きさは本物だったのだろうと思います。

ラグビーへの情熱。
外交官という目標。
そのための、それぞれの努力も尋常ではない精神力に支えられているよう。

世界のあちこちで広げたネットワークを作り上げた人間としての魅力。

外交官としてNGOをサポートし、現地の人の笑顔のために、身を粉にして働く。
テロリストの目標リストに載せられ、イラクに戻るなと言われても現場に戻ってきた彼。
「捨て石」であることをいとわず、誇りに思いつつも、国に雇われ給料をもらっているのだから当たり前だと言える謙虚さ。

この謙虚さを物語るエピソードが、川口外相の「川口賞」辞退。
死後、再び与えられたこの賞を授与され、外相が弔辞でこう言ったそうです。

「あらためて川口賞を贈ります。今回はどうか受け取ってください」(p205)

アメリカのようにチームではなく、個人を『撃墜王』にして対応する日本。
このシステムを変えていいかなければならないことにも、読むと気づきます。

彼の死を無駄にしてはならない。

心からそう思います。
日本のために、困っている人たちのために、子どもたちの笑顔のために、リスクを認識した上で踏みとどまった奥さん。

そのために平和な日本で暮らす自分は何ができるのか。

考えていかなくてはと思いました。

惜しい人をなくした、とはこういうケースを言うのだな、とも。


ご冥福をお祈りいたします。

日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯
|    松瀬 学 | 06:05 | comments(7) | trackbacks(143) |
松岡圭祐『バグ』★★☆☆☆
バグ
松岡 圭祐
徳間書店 (2001/08)

私と相方で評価がまっぷたつ。

私の方がかなり無知で単純にできているので「あー面白かった!」の私に対し、

「普通は読み終えると面白かったーって思うんだけれど、こんなにあら探しがしたくなる本はなかなかない」と相方。

ゲーム業界の企業間の闘い、ゲームの子どもたちへの影響、企業秘密を売ったと疑われる社員、ゲームソフト、ハード制作会社の内情、私利私欲に走る重役たち、家庭内の問題を抱えた社長、壊れかけた結婚生活に涙する社員、そして日本中で突然起きた子どもたちの連続自殺未遂事件。

と盛りだくさんでおもしろいじゃーん!

と私は業界の内幕を覗き見する気分で楽しく読んだんだけれども(これはプレステ2のことだな、これはたまごっち、これは任天堂?などなど)、プログラマーの端くれの相方には、もうたまらなかったらしい。

相方のつっこみの数々の一部を紹介すると…

パソコンいっぱい置いてある部屋がタバコの煙もうもうなんてことあるのか?
音声認識の方が早いなんてことあるのか?
重役においだされたら創業社長が一文無しなんてことあるのか?
いまどき棚一杯のぶあついパソコンのマニュアルなんかあるのか?
いまどき誰もメールもできない病院があるのか?
30分前についたって国際線に搭乗なんかできんだろ?

などなど「ロクに知らずに書いているに違いない」と酷評。


松岡圭祐さん好きの私としては、ぜひ「マジシャン」あたりを読んでもらって名誉回復したいところ。

私もまぁ、スーツのあちこちがブルブルってあたりを想像するとおかしかったですけど、ラストはそうきたか!とそこそこミステリーの醍醐味を感じさせてもらえました。
未来に期待の持てる結末になったし。成功するといいな、二人の願い。

寡黙なプログラマー、技術開発部長の津久井は私のイメージでは線の細い陰気そうな男性だったんだけど、相方が「ドランクドラゴンのオタクな東大生」というのに一番ウケました。

得意なとこだけ饒舌になってあとはしぃーーーーん、ってところ、確かに似てる!
けどそれだとお笑いになっちゃうよ。

そんなこと言ってたら欲しくなってきた。

ドランクドラゴンカンフー[DVD]
iPod nanoよりも先に買っちゃお!


バグ
|    松岡圭祐 | 20:37 | comments(1) | trackbacks(6) |
『蒼穹の昴〈下〉』★★★★☆
蒼穹の昴〈下〉
蒼穹の昴〈下〉
浅田 次郎
講談社 (1996/04)

出版社/著者からの内容紹介
________________________

愛と権力のドラマ、頂点に。魂をうつ歴史超大作!

落日の清朝には領土を分割せんと狙う列強の牙が迫っていた。

科挙進士の友とも別れ、西太后の側近となった宦官の春児(チュンル)は、野望渦巻く紫禁城で権力をつかんでいった。
________________________

ということなのですが…印象に残った点。

読んでないとわからないと思いますが、こんなことを感じながら読み進めました。

プレジデント・リー、かっこよすぎます。

あの地の返還(ちょっと前にありましたねぇ)につながる会談に、ああっと驚き。

爆破事件、はらはらしました。こどもをかばった彼、痛ましい。

リンリンの恋、切ない。

最後の気づき、重い。

どこまでが実在の人物???
歴史って面白い!とこのトシになって実感。

春児をかばう宦官たち。上巻で春児を慈しんだ元宦官たちの人情もよかったけれど、このシーンは痛快!の一言。

栄録の悪運、どこまで続く?見事な悪役ぶり。

天才カスチリョーネの遺蹟、いくつかの謎が書簡によって明かされる。

うまいです。

読み終えて、清の終焉まで見届けたいという気持ちになりました。
疲れたけれど、骨太な、良質なドラマの渦中にいた気持ちになれました。

どこまで史実に基づいていてどこからが空想なのか。

知りたい、知りたい。

と思ったら…主役を変えて、続きあり。

幽閉された皇帝・光緒帝の愛妃、珍妃の暗殺を題材にした宮廷ミステリー。

読みたい読みたい。

珍妃の井戸

蒼穹の昴〈下〉
|    浅田 次郎 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
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